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こんにちはGreeen Mercado(グリーンメルカド)です。今回はカージナルテトラについて紹介します。
カージナルテトラは、ブラジルやコロンビアの原生域に生息する南米原産のカラシン科の魚です。ネオンテトラと非常に似た美しい色彩を持ちながら、一回り大きいサイズで、その存在感は水槽内でひときわ映えます。水草レイアウトした水槽で多数の個体が群泳する姿は、まるで水中に散りばめられた宝石のようです。 また、カージナルテトラは性格が温和で、同じく小型の淡水魚との混泳にも適しており、初心者から熱心なアクアリウム愛好家まで、多くの人に愛されています。本ガイドでは、カージナルテトラの基本的な特徴、飼育環境の整え方、日々のメンテナンス、さらには混泳・病気対策、繁殖まで、幅広いトピックを網羅し、実践的なノウハウを詳説します。
カージナルテトラの基本情報
1. 分類と原産地の概要
カージナルテトラ(学名:Paracheirodon axelrodi)は、南米ブラジルのネグロ川やコロンビアのオリノコ川原産のカラシン科の魚です。長年、熱帯魚の代名詞として親しまれてきたこの種は、もともとワイルド個体が中心に流通していましたが、近年はインドネシアなどでの養殖技術の発展により、ブリード個体も安定供給されるようになりました。
2. 美しい体色とサイズの特徴
色彩の魅力 カージナルテトラは、鮮やかなブルーと赤というコントラストが特徴です。特に赤いラインは顔の部分から尾びれ付近にかけて広がっており、ネオンテトラと比べると、その面積が大きく、印象的です。光の角度によっては背中の青みが強調され、群泳時には水槽全体がまるで生きた光のショーのようになります。
サイズと存在感 体長は約4~5cmと、ネオンテトラより一回り大きいため、群泳させるとその存在感が際立ちます。特に中型以上の水槽では、群れ全体のダイナミックな泳ぎが一層引き立ち、インテリアとしても高い魅力を放ちます。
3. 性格と群れ行動の傾向
カージナルテトラは温和でおとなしい性格を持ち、同じテトラ類や他の小型淡水魚との混泳にも適しています。
群泳の美しさ 飼育環境が整えば、カージナルテトラは自然な群泳行動を示し、十分な数(最低でも5匹以上)で飼育すると美しい群れが形成されます。
ワイルド個体の特性 ワイルド個体は、ブリード個体に比べてやや神経質な傾向もあります。そのため、十分な隠れ家や遊泳空間を設けることで、落ち着いた群泳状態を維持できます。
カージナルテトラの理想的な飼育環境

1. 適切な水槽サイズと設置場所
カージナルテトラの美しさを存分に引き出すためには、十分な水槽スペースが必要です。
水槽サイズの目安 単体飼育の場合は30cm程度の小型タンクでも飼育は可能ですが、群泳させる場合や混泳による水槽ディスプレイを楽しむには、60cm以上の中型水槽以上がおすすめです。
設置条件とポイント 日光が直射しない、温度変動が少ない場所に設置し、地震や落下リスクを回避するためのキャビネットや専用の設置台を使用するとさらに安心です。
レイアウトの工夫 隠れ家や遊泳スペースとして、ライブロック、流木、岩、水草(ウィローモス、ミクロソリウム、アヌビアスナナなど)をバランスよく配置しましょう。特に、底床にはソイルや大磯砂など、弱酸性環境を維持できるものがおすすめです
2. 水質・水温の最適条件
カージナルテトラは弱酸性の水質が好まれるため、以下の条件を維持することが重要です。
水質管理
pH: 6.0~7.0程度の弱酸性環境
硬度: 軟水から中硬水程度で、極端なアルカリ性は避ける
底床: 石灰質を含まないソイル、または大磯砂が最適
水温管理
適応温度は20~28℃ですが、最も快適に過ごせるのは24~26℃前後です。
夏季は冷却ファン、冬季はヒーターを使用し、急激な温度変化を防ぎましょう。その際、予備機器の用意も検討してください。
3. 底床と水草の役割
底床の選定 カージナルテトラは弱酸性水質を好むため、石灰分を含まないソイルや大磯砂が推奨されます。ソイルの場合、手間なく投入できる点が魅力です。
水草の活用 水草は水槽内の酸素供給、微生物の生成促進、そして美観向上に寄与します。特にウィローモスやミクロソリウムなど、群泳するカージナルテトラの色彩を一層引き立てる種類を積極的にレイアウトしましょう。
水槽メンテナンスと水質管理のコツ

1. 定期的な水換えと水足し
水槽内の水質が安定していることは、カージナルテトラの健康を維持する上で不可欠です。
水換え 週1回、約50%の水量を新しい水に交換します。新しい水は既存の水槽水と同じ温度に合わせ、カルキ抜き処理を必ず行いましょう。
水足し 蒸発による水位低下を補い、塩素やpH変動を抑えるため、定期的に水足しを実施。特に、ソイル水槽では微妙な水質変動が生体に影響するため、こまめなチェックが必要です。
2. フィルターとプロテインスキマーの定期メンテナンス
フィルターの選定と清掃 水槽のサイズに応じた上部式または外掛けフィルターを使用し、定期的にフィルター内部のゴミや汚れを除去して、効率的な水循環を維持します。
プロテインスキマーの活用 淡水飼育でも有機物の蓄積は避けたいものです。泡を利用して有機物を吸着除去するプロテインスキマーを活用することで、水質悪化や病原菌の繁殖リスクを低減させます。
3. 水質検査とパラメータの管理
定期的な検査は、健康な水槽環境を長期にわたり維持するための基本です。
測定項目 pH、アンモニア、亜硝酸塩、硝酸塩などを専用の測定器でチェックし、基準値からの逸脱をすぐに修正します。
定期記録 日々の水質データを記録することで、変動の原因分析がしやすくなり、早期対策につながります。
カージナルテトラの給餌・栄養管理

1. 基本的な給餌方法
カージナルテトラは雑食性で、浮上性のフレークや細粒状の顆粒餌を1日2~3回、魚が5分程度で消化しきれる量を目安に与えます。
餌の選定ポイント 魚の口が小さいため、小粒タイプの餌を選び、過大な餌は与えないよう注意します。
生餌・冷凍エサの利用 ブラインシュリンプや冷凍赤虫などを補助的に与えることで、栄養バランスが向上し、体色・活力の維持に大いに役立ちます。
与餌後の管理 食べ残しがある場合は、網やスポイトを使用して速やかに除去し、水質悪化の原因を排除します。
2. 栄養管理と成長促進の工夫
エサの多様化 毎回同じエサではなく、人工飼料と生餌を交互に与えることで、栄養の偏りを防ぎます。
幼魚期の給餌 幼魚は標準的なエサが大きすぎる場合があるため、微細なワムシや専用の幼魚用餌を使用し、成長に合わせて通常の給餌へ段階的に移行させます。
混泳飼育と他種との相性

1. 混泳の基本とメリット
カージナルテトラは温和な性格と群泳習性から、他のテトラ類や小型淡水魚との混泳に非常に適しています。複数種の魚を同じ水槽で飼育することで、より活気あるアクアリウムディスプレイが実現します。
群泳の魅力 十分な飼育スペースが確保され、隠れ家が設けられている環境下では、カージナルテトラは自然な群れ行動を示し、見た目の美しさが増します。
混泳での注意点 種類によってはサイズ差や性格の違いからストレスが生じる恐れがあるため、混泳相手は慎重に選定する必要があります。
2. おすすめの混泳相手と具体例
カージナルテトラの混泳相性が良いとされる魚種を、以下のようにご紹介します。
【テトラ系】
ブラックネオン・テトラ、ブラックファントム・テトラ → シックな体色が互いの色を引き立て、温和な性格により、水草レイアウト水槽での混泳に最適です。
【コリドラス系】
コリドラス・アエネウス、コリドラス・パレアタス → 低層を泳ぐコリドラスは、中層を泳ぐテトラ類と干渉しにくく、テトラの食べ残しを掃除してくれるため、掃除役としても理想的です。
【グラミー系・ラミレジィ】
ネオンドワーフ・グラミー、ラミレジィ → 外観が異なるため、カージナルテトラの存在感が際立ち、群れ全体に緊張感を持たせ、まとまりを作る効果があります。
【混泳を避けるべき例】
近縁のテトラ:ネオン・テトラ、グリーンネオン・テトラ → 発色が似通っているため、雑然とした印象になることがあるため、どちらかひとつに絞ると見栄えが良くなります。
エンゼルフィッシュ、ディスカス → サイズ差により、カージナルテトラが捕食されるリスクがあるため、混泳させる際は十分にサイズに注意するか、混泳を避けた方が安全です。
3. 混泳相性表
以下は、代表的な混泳相手とその相性を示した例です。
混泳相手 | 混泳相性 | 備考 |
---|---|---|
グッピー | ◎ | 弱アルカリ性を好むため、調整が必要な場合もあります |
プラティ・卵胎生メダカ | ◎ | 温和な性格で混泳に適している |
カラシン・小型テトラ | ◎ | 同種同士で群泳しやすい |
コイ・ラスボラ | ◎ | サイズが適していれば入り混じっても問題なし |
ローチ・ボーシャ・タニノボリ | 〇 | 種によっては工夫が必要な場合もある |
フライングフォックス/アルジイーター | 〇 | 種によっては共存可能、ただし個体差に注意 |
ドワーフシクリッド | 〇 | サイズ差に注意 |
アフリカンシクリッド | × | 混泳には非常に不向き |
エンゼルフィッシュ | △ | サイズ差に十分注意。小型個体同士なら可能 |
ディスカス | △ | 同上。捕食のリスクが高い場合がある |
ベタ・グラミー・アナバス | ◎ | 温和で混泳しやすい |
コリドラス | ◎ | 底層を泳ぐため、衝突が少なく、掃除役としても最適 |
オトシンクルス・ロリカリア | ◎ | 小型で混泳に適している |
プレコ | ◎ | サイズや性格の調整ができれば混泳可能 |
レインボーフィッシュ | ◎ | 中性寄りの水質を好むが、適切であれば混泳可能 |
ハゼ・ゴビー | 〇 | 種によっては工夫が必要 |
フグ・パファー | × | 混泳には絶対不向き。捕食リスクが非常に高い |
エビ・ビーシュリンプ | 〇 | 稚エビは時折捕食される可能性があるので注意が必要 |
※混泳相手は、種ごとや個体の性格により相性が異なる場合があります。必ず事前に十分なリサーチと水槽内の環境調整を行ってください。
カージナルテトラの繁殖の難しさとその魅力

1. 繁殖の現状と基本的な考え方
カージナルテトラは、温和で丈夫な性質から飼育自体は容易ですが、繁殖は非常に難しいとされています。
繁殖の難易度 ネオンテトラすらも家庭での繁殖に苦労する中、カージナルテトラの繁殖はさらに高い難易度が求められます。温度や水質、照明条件、隠れ家の設置といった微妙な条件を完璧に再現しなければ、成功例は非常に稀です。
2. 繁殖環境の再現と実践例
専用繁殖水槽の設置 淡水魚飼育の基本設備に加えて、専用の繁殖用水槽(60cmクラス以上)を用意し、産卵床として利用できるシェルターや植木鉢、ライブロックを配置します。
水温・水質の調整 産卵適温は27~28℃前後。安定した水質と弱酸性環境を維持することが成功のカギです。
繁殖成功例の希少性 環境条件を完璧に揃えたとしても、カージナルテトラの繁殖に成功するのは非常に難しく、成功例は限られています。しかし、成功した際の希少価値は高く、熱帯魚ファンやコレクターの間では大きな話題となります。
カージナルテトラの病気とその対策
1. 主な病気とその症状
飼育環境の乱れやストレスが原因で、カージナルテトラを含む小型カラシンはさまざまな病気にかかることがあります。
尾腐れ病 尾びれの先端がパサつき、裂けたり溶け出すようになる病気。水質の悪化や外傷が原因となるため、日常の水換えや器具の清掃を十分に行うことが必要です。
白点病(イクシア症) 体表に白い点が現れ、進行すると全身に広がる。急激な水温変化やストレスが引き起こすため、初期はメチレンブルーやマラカイトグリーンなどの青色系水薬で対処します。
2. ネオン病の対策
さらに、ネオン病という病気も報告されています。
ネオン病の概要 カージナルテトラやラスボラなどの小型カラシンが発症する病気で、尾腐れ病と同じ原因菌であるカラムナリス菌(Flavobacterium columnare)によって、筋肉内に感染するとされています。
対処法 ネオン病は進行が非常に早いため、感染が疑われた個体は直ちに他の魚と隔離し、黄色系の抗菌剤(フラン剤やオキソリン剤など)を用いた早期治療が必要です。対処は尾腐れ病と同様に進め、迅速な隔離と治療で被害拡大を防ぎましょう。
3. 病気予防のための対策
定期的な水質管理とメンテナンス 水温、pH、アンモニア、亜硝酸塩などのパラメータを定期的にチェックし、急激な変動がないよう管理。
ストレス軽減 過剰な給餌や、混泳による密集状態はストレスを引き起こすため、適切な環境整備と給餌管理が必須です。
FAQ(よくある質問)
Q1. カージナルテトラとネオンテトラの見分け方は? A1. カージナルテトラは赤いラインが顔から尾にかけて広く、体全体に鮮やかなブルーの縞模様が入り、ネオンテトラよりも一回り大きいです。ネオンテトラは腹側中心に赤が多く、群泳した際の存在感は劣ります。
Q2. 適正な水質・水温はどのような条件ですか? A2. pH6.0~7.0の弱酸性環境、温度は20~28℃(最適は24~26℃)が理想です。これを維持するために、定期的な水換えおよび水温調整が必要です。
Q3. どのような水槽レイアウトが最適ですか? A3. ソイルや大磯砂を使用した水草レイアウト、水槽内にすっきりとした隠れ家(ライブロック、流木、水草)を作ることで、カージナルテトラの群泳をより美しく演出できます。
Q4. 混泳に適した相手魚種は何ですか? A4. カージナルテトラは、同じテトラ類(例:ブラックネオン・テトラ、ブラックファントム・テトラ)、コリドラス系、そしてネオンドワーフ・グラミーやラミレジィとの混泳が適しています。ただし、近縁のネオンテトラやグリーンネオン・テトラ、またサイズ差の大きいエンゼルフィッシュ・ディスカスとは注意が必要です。
Q5. ネオン病とはどのような病気で、どのように対処すべきですか? A5. ネオン病は、カラムナリス菌(Flavobacterium columnare)による感染症で、尾腐れ病と同様の原因菌が関与しています。進行が非常に早いため、感染が疑われた個体は速やかに隔離し、黄色系抗菌剤で対処することが重要です。
Q6. カージナルテトラの繁殖は家庭で可能ですか? A6. カージナルテトラの繁殖は非常に高い難易度があり、通常の飼育環境では困難です。専用の繁殖水槽を用い、産卵適温(27~28℃)や適切な隠れ家を整えた上で試行錯誤する必要があります。
まとめ
カージナルテトラは、その美しい青と赤のコントラストと群泳時のダイナミックな存在感で、多くの淡水魚飼育家に愛される種です。丁寧な水槽管理、適切な給餌、混泳相手の選定、そして日々のメンテナンスによって、あなたのアクアリウムが美しい生体ディスプレイとなることは間違いありません。 今回のガイドが、カージナルテトラの飼育にチャレンジするすべての方々の参考となり、今後のさらなる発展や環境改善に寄与することを願っています。